9月のご挨拶 ~技術に投資する難しさ
9月も後半戦となりました。
金型&プレス加工の篠原工業でございます。
暑さ、寒さも彼岸まで。昔の方の教え通りに、9月15日を過ぎたあたりから気候が変わり始めました。この記事を書いている22日は、朝はひんやりと涼しい風を感じました。それにしてもなんという猛暑だったでしょうか。体調もそうですが、健康な状態でも作業が前に進まないような、そんなエネルギーの重圧を感じておりました。
さて、涼しくなったのだから、景気も活発になってほしいところですが、現在日本は、政局となっており、少数与党の総裁選が話題となっております。海の向こうアメリカでは、痛ましい暗殺事件も発生しました。日々、きな臭い危機感を感じています。そうかと思えば、何事もなくグローバル生産は続いており、I-phoneの新型やニンテンドースイッチ2など、海の向こう(中国ほかアジア)で生産されたものが相変わらず日本に入ってくる毎日です。農業でも、アメリカ産など外国米が、何気なくスーパーに並ぶ状況となりました。国産が非常に弱い印象を持っています。
今は平和なのかそうではないのか、混乱してしまいます。そんな世の中ですが、ひとつの答えは、どの状況であっても、ものづくりは、続けなければならない ということです。そして、そのサークルの中に、私たち日本の中小企業も、入っていかなければいけません。
ところで、ある製品の工程で、ロウ付け溶接があるのですが、請負の会社が廃業方針ということで、代替企業を探すようお願いしました。ところが、その企業はまだ見つかっておりません。業者がみんな引退して、FIXする企業がいないのです。仕事がないから、どちらも廃業したのです。
ものづくりは続けなければいけない、のですが、ここでもうひとつ大事なのは、わが国にものづくりの技術がなければいけない ということです。技術を残すためには、ずっと飯を食えるだけの仕事も必要となります。海外の工場は、それなりに充足しているのでしょうから、この国の生産を増やす政策や、方針がもっと出てこないものでしょうか。もう、ブームにするくらいで良いと思います。メイド・イン・ジャパン・ブーム。それくらいでやっと潮目が変わるのではないでしょうか。
今が平和か、そうでないかは、とりあえず置いておくとして、先日お会いした取引先との会話でも、わが国の基礎技術の喪失について、懸念を共有する時間がありました。当社もそうですが、中小製造業が生き残ろうとして取る道筋として、①高付加価値のものを作る ②小ロット生産体制にする ③少数精鋭体制にする ①~③は重複するようなところもあるのですが、要は小さくなって生き残る作戦が一般的な対策となっています。
今を生きるという意味では合理的ですが、長い目でみて、どの企業も小さくなるとどうなるのか。おそらく生産性は上がっても生産力は落ちます。そして、小さくしてもダメだった場合、もう後がないので、廃業やM&A ということになります。これらの帰結は、そういった会社が持っている小さなダイヤモンドのような、基礎的な技術、技法の喪失、多様性の喪失となります。
例えばロウ付け溶接は、基礎的な工法のひとつです。当社の仲間が工場廃業するので、代替業者を探してほしいと伝えたところ、適当なところが見つかりません。ネットで見れば、ロウ付け業者そのものはいますが、適正単価、当社製品の品質にはまる相手が見つからないのです。ほんのひと昔前であれば、誰かしらにたどり着いたものですが、みんな辞めてしまったようです。
さて、技術の喪失を抑えて、今作っているものを維持・継続させていくためにはどうすれば良いのか。その結論は、わが国にたくさんの仕事を作り出すことにつきます。海外生産ではなく、わが国の上に、です。それぞれの分野に仕事があふれれば、企業倒産廃業も下げ止まるでしょう。外国にもいろいろ事情はありましょうが、まずは日本国内が一番です。
 
            